「白野さんは俺を嬉しい気持ちにさせるから、今もこうしてるのがすごい幸せだなって」


ドキッと、胸が高鳴った。
優しく大人びている彼の、甘える姿。

私の知らない彼が、そこにはいた。


先ほどから抱きしめられていて、ドキドキするけれど。
抵抗しようとも離れようとも思わない。

大人しく、その場でじっとする。


きっと、彼の抱きしめ方が優しいから。
甘い一面が見えているから。

嫌という気持ちはなく、ただドキドキしているだけ。


ふたりきりの教室が、ふたりだけの時間が。
どこか“秘密”のような空気感を漂わせていて。


「白野さん」
「は、はい…!」

突然名前を呼ばれたものだから、思わずうわずった声が出てしまった。


「……かわいい」

そんな私の反応を見て、小さく笑われてしまう。
本当に恥ずかしい。


「ど、どうしたの?」

恥ずかしいため、慌てて話を戻す私。