愛子ちゃんは志芳ちゃんの席を指差す。


志芳ちゃんはいつもみたいに本は読まず、ただ頬杖をついて、私から顔を背けて目を合わせないようにしていた。


「志芳の奴ふてくされてんの。希望に彼氏ができて悔しかったのかな?」と愛子ちゃんが小声で言う。


「私に? じゃあ志芳ちゃんも一月君のこと?」


「かもね」


先生が来た。私は席へ戻る。


その途中、前から歩いてきた二人の女子の一人が肩をぶつけてきた。


「あ、ごめん……」と言いかけると、


「あんたなんか死ねばいいのに…」
「不釣り合いなのよ。一月先輩とあんたじゃ…」


二人は魔女のような冷たい目で私をにらみ、すぐに歩いていった。