彼の名前は
黒澤一月(くろさわいつき)君。


私の通う桜町高校で
一月君を知らない人はいない。


漆黒の髪に、鋭い目つき。


あまりにも整いすぎた美しいルックスは、男の人でも簡単に恋に落ちてしまうと噂されるほどだ。


当然のように学校でも一番モテる。


それなのに、いつも人を寄せつけないような威圧感のあるオーラを放っているから、一月君はみんなから“冷徹王子”なんて呼ばれていたりする。


誰もが憧れて、恋に落ちて、


それでも誰も
触れることができないような高嶺の花。


そんな一月君とごく平凡な私は、普通なら絶対に関わりあいになるはずはない。


“はずはない”と思っていたのに……


「どうして私、
こんなことになっちゃったんだろう…?」


体中が沸騰しそうなくらい熱くなって、
私は彼から体を背けた。


すると……


「おい、こっち向けよ」
不満げな一月君の声が響く。