冗談のつもりか、それとも本気か。

彼の表情を確認したいけれど、抱きしめられているためそれができない。


「では、もう手出しはしないのですね」

「そうです。
まあ、違う意味では手を出そうと思っていますが」

「へ……」


先生も神田くんも、揺るがない声。
つまり本気で言っているのだろう。

結局私は神田くんに手を出されるの?


それって危険なことなんじゃ……と思うと怖くなり、思わず顔を上げてしまう。

視界に映ったのは、穏やかな表情である神田くんの姿。


「白野さん、どうしたの?」

不安げに揺れる私の瞳を見つめながら、彼は安心させるかのようにして、優しく聞いてきた。


「あ、あの…」
「うん」
「私、何かされちゃうの…?」


そう思うと怖い。
さっき、脅すという言葉も出てきたくらいなのだ。