「高橋さん、進路の事で話があります。放課後、準備室へ来るように。」

生物の授業の後、先生に声を掛けられた。

理由は分かる。

私が急に大学に行かないとか言い出したからだ。お姉ちゃんが先生に言いつけたんだろう。

私の事を心配してだとわかるけど、わかるけど…なんか面白くない。

それに、私だって気まぐれで自分の進路を急に変更しようと思った訳じゃない。

元から大学に行く気なんてなかった。

なのにお姉ちゃんは私に絶対、大学に行けって言うから…

きっと、自分が大学にちゃんと行けなかったからだと思う。

交通事故でお父さんとお母さんがこの世から突然いなくなったのは今から6年前の事。

私はその頃まだ小学生で、お姉ちゃんはちょうど大学2年の時だった。

いつでも成績の良かったお姉ちゃんは大学を出たら将来、学校の先生になるつもりだった。

けれど両親が亡くなった事で幼い私を自分がなんとかしなきゃって思ったんだと思う…それで先生になる夢を諦めた。

そうと決めたらさっさと就職して私との生活を守るためにその後はひたすら働いた。

お洒落もせず、友達と遊びに行くこともせず、そして恋も……

この前、お姉ちゃんが初めて先生とのことをちゃんと話してくれた。

実は同じ大学に通ってたってこと。お互い思い合っていたってこと。そしてお姉ちゃんが大学を辞めて働き出したのをきっかけに疎遠になっていたこと。

それから……私が今の高校に入った事でお姉ちゃんと先生が運命の再会をしたことも。

言葉を選びながら私が傷付かないよう丁寧に話してくれた。

どんな時でもお姉ちゃんはやっぱり私のお姉ちゃんだよ。

今ではたった一人の家族。

だからこそ、

だからこそ、私はお姉ちゃんにおめでとうって言わなきゃいけないんだ。

良かったねって。

心からの祝福を……

まだ少し時間掛かりそうだな。