「芽唯〜〜?」


階段下から私を呼ぶママの声。
きっと、"おつかいに行ってきて〜"とかそんなことだろうと思いながら


「なーにー?」


とりあえず、大声で返事だけして。
手元のスマホで紗蘭ちゃんへLIMEの返信をする。


佐倉の歓迎会に来た飯田くんと、無事に良い感じになった紗蘭ちゃんは


ついに昨日、水族館に誘われたらしい。
今じゃ飯田くんの方が紗蘭ちゃんにメロメロなんだから、さすがだよ。


水族館なんて、やっぱり女子としてはデートの場として1度は憧れるよね。



───コンコン



突然、部屋にノックの音が鳴り響く。


いつもなら絶対に私が部屋から顔を出すまで要件を言わずに名前を呼び続けるママが、今日は珍しく部屋の前まで来て


しかも、ノックまで!?


そりゃ、夏休みも終わるわけだよ。



「だから、なーに?って……ば」



言い終わる寸前、ガチャッと音を立てて部屋のドアが開いた。


てっきりママだとばっかり思ってたのに


「ごめん、芽唯。おばさんに上げてもらった」



そこにいたのは、少しだけバツが悪そうに、だけど優しく笑う弥一。