ローズの歳は十八歳で二十歳のベアトリスとそれほど変わらないが、素顔でいると歳より若く見られることが多い。ありていに言えば、童顔なのだ。だからローズは、ベアトリスのふりをするときはいつも大人びて見えるような化粧で誤魔化している。


「お好みに合わなくて申し訳ありません」

 言って、つん、と視線を外す。あまりまじまじと見られるのはまずい気がする。とてもまずい気がする。

 これがこの男の婚約者という立場でなければ、扇で顔を隠しておくこともできるのだが。

「ずいぶんと気が強いのだな」

 笑いもせずに言われた言葉に、ローズはぎくりとする。

 あまり無愛想にしていてこの結婚が破棄されても困る。かと言って、今の自分と親しくなりすぎるのも考えものだ。そのさじ加減が難しい。