「……っ」
全身に熱がまわる。
二人の間には机ひとつ分があるはずなのに、こんなにも距離が近い。
「こんなことで真っ赤になって。
この先、耐えられるか不安だな」
何気なく言っているつもりだろうけれど、私には引っかかることしかない。
“この先”って何?
何から耐えられるか不安なの…?
彼が説明不足なのか、それとも私の理解不足か。
「あの、神田く…」
声を出すので精いっぱい。
限界はもうとっくに超えている。
「これだけは覚えておいて。
白野さんはもう、今まで通りにはいかないって」
意味深な言葉。
それを最後に、ようやく神田くんの手が離れた。
「じゃあまた明日。
気をつけて帰ってね」
神田くんはメガネをかけて立ち上がる。
もう目の前には私の知っている、いつもの彼の姿。
私に気遣いの言葉をかけてくれてから、荷物を置いて彼は教室を後にした。