「はあ〜そろそろ終わるか。慶一郎さんも、もう来る頃だろ」
空になったコーラのペットボトルを片手で振り回しながら、中島くんが立ち上がって背伸びをする。
一方で本多くんは、なんだか物憂げな表情を浮かべていた。
「慶一郎さんの黒塗り高級車でいきなり倉庫に乗り込むのは気が引けるな……。襲撃と勘違いされかねない」
「三崎慶一郎の愛車なら大抵のヤツは把握してるだろ。それに楽しい喧嘩なら俺は大歓迎」
「くだらないことで騒ぎ起こされると困る。中島が黒蘭の主催者に連絡入れてよ、どうせ繋がってるんでしょ」
「どうせって……。ほんっと、イヤな言い方するよな」
「事実だろ、裏切り者」
治安の悪い会話が始まったように思えたけど、ふたりとも、本気で言い合っているわけではなさそう。
「お前さ、だれが命救ってやったと思ってんの?」
「べつに助けてなんて頼んでない。……でも、まだお礼言ってなかったかな、ありがとう」