いったん荷物をとりに席に戻ると、中島くんが遠慮ぎみに見つめてきてきた。
「……どうした? 顔、真っ青だけど」
さっきまでのおちゃらけた様子はなくて、本当に心配してくれてるのかな、なんて思いながらも
傍から見てわかるほど、ひどい顔をしているんだと情けない気持ちになる。
おでこにもうっすらと汗がにじんでるのがわかった。
「俺のせい?」
真剣な声。
さっきまで理屈を並べてたくせに、なんでいきなり
したてに出てくるのか分からない。
「違うよ。ていうか、全然大丈夫だから」
「それ、大丈夫な顔じゃないだろ」
「大丈夫だもん」
「上月、」
背中を向けて立ち去ろうとしたら、手首をつかまれた。
反射的に振り払ってしまう。
「中島くんには関係ないから……!」
言ってしまったあとで、乱暴すぎたかも、と後悔が押し寄せる。
だけど「ごめん」の一言がなぜかすぐに出てこなくて。
一時の沈黙。
タイミングを完全に逃してしまった。
こんなときに限って、中島くんは言い返してこない。
結局そのまま、ミカちゃんの元へ走って、罪悪感だけが気持ちわるく残った。