…李那、ありがとう。
【更科蒼空side END】

【中矢裕side】
何年か経って叶夢が高校生になった。
染井高校2年生。
俺達の母校に行っている。
1年の時に中2に告白されて付き合ってる。
…まあ、希望なんだけどな…
子世代まで付き合いが深まるとは思ってなかった…
希望と付き合ってるって聞いた時はコーヒー吹き出してしまった。
…3つ目のDVDも叶夢は泣きながら見ていた。
『私のことは忘れて、大切な人を幸せにしなさい。
これはお願いじゃなくて約束。』
…李那を忘れるなんて出来ねぇと思うよ。
叶夢にとって、お母さんは大事な人だからな。
俺にとっても優しくて頼りになる大切な女の人だ。
…李那、愛してる。

「ー…お父さん!!!」
「…」
大きくなったなあ…叶夢…
もう、叶夢もお父さんだ。
もう俺もおじいちゃんになってしまったよ…
孫の顔見れた。
もう、満足だよ。
「お父さん!聞こえる?!」
「…かな…め…」
…もう俺もおじいちゃん…
いつ逝ってもいい。
なあ李那?
そろそろ迎えに来てくれよ。
「お父さん!」
「じいちゃん!!」
叶夢の泣きそうな顔。
…お前にはもっと大事にすべき人がいるだろう?
海澪ちゃんも蒼空も、秀一もいない。
俺が、1番長生きしたよ。
「ー…裕くん!」
…やっと迎えに来てくれたね。李那。
後ろには皆もいる。
お別れだ。叶夢。
「お父さん!!!」

中矢裕、享年78歳。
息子家族に見守られながら永眠。

「裕くん、お待たせ」
「遅いよ、李那…」
李那は死んだ時のまま。
綺麗な顔で俺を迎えに来てくれた。
李那に差し出された手を握って俺はみんなの元へ向かう。
黒田先輩も、蒼空も、海澪ちゃんも、大切な李那もいる。
精一杯生きたんだ。
李那も、皆も。
愛しい人。
愛しい家族。
ありがとう。

俺の大切な彼女は難病。
筋萎縮性側索硬化症。
未だに治療法は解明されていない。
早く、治療法が見つかって苦しむ人がなくなることを願う。
【中矢裕side END】

ー[完]ー