わたしって本当に単純だな……
って思っていると……。


「何が楽しみなの?」


背後から突然聞こえてきた声にびっくりして、あわてて後ろを振り返ると、凪くんがいた。



「い、いたの……!?」

「うん。今来たところ」


ひぇぇ……。
今のひとりごと聞かれてたってことだよね?


途端に恥ずかしくなって、思わず下を向いてしまった。



「で、何が楽しみなの?」


上から聞こえてくる凪くんの声はいつもと違って、少しだけイジワルな気がする。


たぶんだけど、今の凪くんは楽しそうに笑っていると思う。



「ねぇ……教えてよ、有栖ちゃん」

「っ……!」


そのまま、凪くんの大きな手がわたしの頬にそっと添えられた。


その瞬間、
前に触れられた時の記憶がよみがえってくる。


やっぱりあの出来事は夢でなかったと錯覚させられるくらい、触れられた感覚が同じだった。