ケータイ小説 野いちご

鷲高の王と囲われ司書




まだ恐怖と怒りで動悸がおさまらない。矢吹くんに何を言ったらいいのかもわからなくて、顔も見られないまま、黙り込んでしまう。

すると矢吹くんが、「‥‥お前って、そんな大声出せたのな」と、少し感心したように言ってくる。

「わ、私も自分でびっくりだけど‥‥火事場のなんとかってやつかも」

生まれてこのかた、あんな大声なんて出したことがなかった。ただ、この場をどうにかしなきゃと思ったら、自然と声が出ただけだ。

「はは、‥‥ほんと、よえーのかつえーのか、よくわかんねー奴‥‥」

力ない様子で笑ってそう言うと、矢吹くんはごろんと地面に倒れこんだ。

「ちょっ‥‥大丈夫!?」

「あー‥‥しんど‥‥」

駆け寄って、額に手を当ててみると、相当熱い。眉間に皺を寄せて、つらそうな様子の矢吹くんに、ますます心が痛んだ。

「‥‥とにかく、早くうち行こう?遠慮とかしなくていいから」

そう言うと、矢吹くんは観念したように頷いて、ゆっくりと起き上がった。



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