その後、果乃が帰ってきてから、話しかけるのことはできなかった。


帰るまでに話したい。


「果乃。」



教室の空気は一瞬にして凍りついた。



全員が声を発した俺を見る。

思ったよりも大きい声で、なんで自分がこんなことを言ってしまったのか、わからない。

でも。後には引けなくなってしまった。


「今、千景が名前で呼んだ…」
「え、え、どういう関係?」
ヒソヒソと話す声。


「果乃、ちょっと!」
「へ?」

強く腕を引き、教室を出る。

「千景くん?どうしたの?!」
「ごめん、ちょっとだけ…」

廊下ですれ違う人も、先生でさえも、みんながびっくりして振り返る。風を切るような早歩きで果乃が手痛いんじゃないか、とかついてこれているか、少し不安になりながらも屋上を目指す。