ーピリリリリ…
ーピッ
「もしもし?」
『あっ裕さん。どうも。』
「どした」
久しぶりの蒼空の声。
「李那になんか用事か?」
『いや、そうではなくて、裕さん、教室に忘れ物ありましたよ。』
…ん?忘れ物?
なんか忘れたっけ…ああ!
「スパイク!」
『正解です。今近くまで来てるんですけど、どうします?』
「今公園いるからそっち来て。」
電話の向こうから笑う声が聞こえる。
…誰かと一緒なのか?
まあ蒼空にも友達の数人くらいいるわな。
「あ、裕さん。」
「よっ。ありがとな。」
電話を切った後直ぐに蒼空が来た。
ほんとに近くにいたんだな。
「普通に机の上に置いてありましたよ。」
このスパイクは大事な物なんだ。
李那がプレゼントにくれたやつだから。
まさか誕生日に欲しいって言ってたスパイク貰えるなんて思ってなかったから驚いた。
「かなり年季入ってますねえ」
「まあな。」
ずっと大事にしてきてるからな。
俺の宝物だ。
「あっ、中矢先輩!」
ん?先輩?
誰だ?
「あ、椿、桜。」
かなり久しぶりにあったな。
半年くらいか?
病院であったのが最後だから、それくらいか。
それにしても2人とも落ち着いたな…
椿は元々大人しい子だけど…
桜はおてんば娘から大人しくなった感じだ。
「私達も春川の娘ですから。
そろそろ娘、の自覚を持たなきゃダメなんです。」
春川、…はるかわ?
華道一族の…
あの大きな家か。
だから、どことなくお嬢様の雰囲気があったのか。
「陸上はまだ続けてますよ」
お嬢様の雰囲気はあっても陸上好きだもんな、2人とも。
「あっ、李那先輩…元気になったようでよかったです…心配してたんです。」
「あっ…椿、桜。久しぶり…」
李那も思い出したようにニッコリ笑う。
椿とあえて嬉しいんだろう。
桜は少し後ろに下がり考え込んでいるように見える。
その後李那に向かって勢いよく頭を下げた。
「すみません!李那先輩!」
「…え?」
【中矢裕side END】

【如月李那side】
海澪や蒼空と話しているとき。
椿と桜が来たのは知ってた。
純粋に会えて嬉しいのもあって楽しく話してた。
…のになんで?
桜はなんで私に頭を下げてるの?
「桜…?どうしたの?」
「…」
桜は頭を下げたまま動かない。
腰までの長い髪が地面についている。
私は桜に近づいて髪を持つ。
「ほら、髪、汚れるよ。頭上げて。」
「…」
「何があったの?何に謝ってるの?
…話してくれなきゃわからないよ。」
椿も不思議そうに桜を見つめる。
私だってなんで謝られているのか分からない。