伊達先生は驚いたような目で、俺をしばらく見つめた。海斗は何の話かわからない、と言いたげな表情だ。

「上杉、いいのか?」

伊達先生が迷っているような顔を見せる。俺は何度も伊達先生と歴史の話をしたことがあるが、戦争の話は避けていたからだろう。

「大丈夫です!」

俺は大きく頷く。

伊達先生はしばらく考えてから、ゆっくりと口を開いた。

「第一次世界大戦は、1914年にセルビア人青年がオーストリア皇太子夫妻を暗殺したことで始まったんだ。オーストリア・ドイツなどの同盟国軍と、フランス・ロシア・イギリスの連合軍との戦いになった。日本はこの時日英同盟を組んでいたため、連合軍として第一次世界大戦に参戦したんだ」

第一次世界大戦では、大砲や機関銃の攻撃をかわすための塹壕が掘られ、戦争が長引いた。毒ガス、戦車などの新兵器も開発されたんだ。

「1917年になると、連合軍側に新たに中国とアメリカもついたんだ。アメリカの参戦後、同盟国側は戦意を失っていき、1918年にオーストリアは連合軍に降伏。ドイツも降伏したんだ。四年にわたる大戦は、約九百万人といわれる死者と、それを上回る負傷者を出して終わったんだ」

伊達先生の言葉を、俺は一つ一つ聞き逃すまいとしっかり耳を傾ける。聞く義務があるんだ、俺たちには!

「1919年にパリで講和会議が開かれたんですよね。そこで結ばれたベルサイユ条約によって、ドイツは全植民地の放棄、巨額の賠償金の支払いが命じられたんでしたっけ」