病み上がりの水野君はただでさえ弱っていたのに、さらに苦しめるようなことを言ってしまった。

でも、まちがったことは言ってないと思うんだ。

「夏目さん、おはよう」

「え? あ、佐々木君! おはよう」

朝から爽やかな笑顔を浮かべる佐々木君。

「水野の奴、サッカーやる気ないのかな? 作戦会議にも出ねーしさ。明日から、昼休みにみんなで練習しようっつってて。水野にも参加してほしいんだけど」

「うーん……どうなんだろう」

「諦めずに、今日も誘ってみるよ。だから、夏目さんもフォローよろしく!」

うんと返事はしたものの、私なんかの言葉を聞くような水野君じゃない。

ああ、こんな時に瑠夏ちゃんがいてくれたら、水野君は素直に聞くんだろうな。

——ガタッ

隣から音がした。恐る恐る振り返ると、そこには水野君がいた。

「お、おはよう」

目が合ったので挨拶くらいはしてみる。でも、水野君が返してくれることはなかった。

「風邪、大丈夫?」

それでも負けじと話しかける。今の私にできることは、情けないけどそれくらいしかない。

水野君はもう、私のことさえも見てくれない。

予想していた反応だけど、目の当たりにするとかなりキツい。まるで出会った頃のように、水野君は心を閉ざして私のことを遠ざけようとしている。