すると彼は、ふいに片手で私の手首をそっと掴むと、顔をじっと近づけてきた。


至近距離で見つめられて、心臓がドキッと跳ねる


「でも俺、本気だから。雪菜のことは」


そう告げる彼の瞳はとても真剣で、目をそらせなくなる。


なにそれ。本気って、それじゃあまだ……。


「今はまだ、信じられないかもしんないけどさ、俺の気持ちが真剣だってわかってもらえるように頑張るから」


「なっ……」


「あきらめないから」


ハッキリと言い切る一ノ瀬くん。


私はそんな彼の言葉にひどく戸惑いつつも、なぜだかわけもなくドキドキしてしまった。


ねぇ、どうして……。


どうして一ノ瀬くんは、私のためにそこまでするのかな。


どうして私にこだわるんだろう。


ほんとに、調子が狂うよ。


でも、昨日の件で私はずっと、彼のことを傷つけてしまったんじゃないかって心配だったので、元気そうな彼の姿を見て、心のどこかでホッとしていた。