憂うつだけど、人数が足りない女子サッカーに出ることになった。同じく皐月も一緒だから、一人よりかは心強いけれど。足を引っ張ってしまったらどうしよう。サッカーなんて、今までやったことないよ。

「じゃあ、次。男子サッカーな。やりたい人ー!」

「はーい、はいはい! はーい!」

元気よく声をあげたのは佐々木君だ。

「じゃあ佐々木と後藤と本山と……っていうか、あと決まってない奴全員サッカーだな。それでちょうど人数が合うわ」

クラスの名簿を見ながら、学級委員の男子が黒板のサッカー欄に名前を埋めていく。そこには水野君の名前もあった。

ちらりと様子をうかがうと、水野君は真顔で前を見つめていた。どう思っているんだろう。でも、本当はやりたいはず。きっと、サッカーが好きなはず。

「ねぇ水野君、よかったら私にサッカーを教えてくれないかな?」

お昼休み、私は水野君に思い切ってそう言った。あの日からずっと、花壇の前で水野君とお昼休みを共にしている。

「なんでだよ?」

サッカーと聞いて水野君の表情が強張ったのがわかった。

「球技大会で女子サッカーに出ることになったんだよ。私、今までサッカーなんてしたことないし……運動が苦手だから、みんなの足を引っ張るかもしれないって考えたら申し訳なくて」

水野君はしばらく考えこむような表情を見せたあと、観念したようにため息を吐いた。

「明日、朝五時に総合公園のグラウンドに集合な」

「え?」

あ、朝五時……?

「なんだよ? 夏目が言い出したんだろ」

「は、はーい、よろしくお願いします」

果たして、大丈夫かな。