泣いたあとは少しだけ心が軽くなったけど、完全に晴れることはなかった。蒼君のことを聞いて、衝撃が強すぎた。頭の中でうまく処理しきれなくて、まだ苦しい。

「早く目を覚ますといいね……っ」

そんなありきたりなことしか言えない自分が、情けなくてたまらない。ほかにどう言えばいいのかわからなかった。

「うんっ……絶対、目を覚ますって信じてる。春ちゃんもね……大好きなサッカーをやめちゃうくらい、蒼君のことがツラかったんだと思う。ほんとはね、二人に仲良くしてほしくて、春ちゃんにサッカーを続けてほしくて、病気のことを春ちゃんに何度も言おうとしたんだ……だって、仲たがいしたままなのは私も嫌だし。でも春ちゃんを前にすると蒼君の悲しそうな顔が頭に浮かんで……言えなかった。普通なら言うべきなんだろうけど、蒼君の気持ちを考えたら……言えなかった。蒼君が必死になって隠そうとしていたことを……私の口からは言えなかったんだよ」

「瑠夏、ちゃん……」

ずっとずっと苦しんでいたんだね。悩んでいたんだね。葛藤していたんだね。

本当にこれでいいのかがわからなくて、誰にも相談できなくてツラかったのかな。

おこがましいけど、私はそんな瑠夏ちゃんの力になりたいよ。

なにをどうすればいいのかはわからないけど、話を聞くくらいならできる。

「なにかあったら……いつでも言って。瑠夏ちゃんがツラい時は飛んでくるから」

そう言って、私は瑠夏ちゃんの華奢な手をギュッと握った。