「……なんですか」
まただ、と思いながら私は自分の足元を見下ろした。案の定、ストッキングに水滴が跳ねている。
全力で走ったもんな……。
汚れたパンプスのつま先を拭おうと屈んだら、ぽつりと名取さんの声が落ちてきた。
「前原ちゃんて……イモはイモでも、安納芋だったんだな……」
この営業マンは、また意味のわからないことを言っている。
「はいはい、どうせイモですよ。それより早く戻らないと」
「いや、ちがうって。褒めてるんだって」
改札に向かって歩き出すと、名取さんが慌てたように追ってきた。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…