「それで…君の時間を貰いたいんだけど、どうかな?」

琥珀が再びそう言ってきたのは、しばらく他愛のない話をしたあとの事。

「時間を貰うって…死ぬのを延期することでしょ?
私、明日には、もう…」

死にたい。

この数時間で、琥珀とはかなり仲良くなれた。

それでも、死にたいという思いは変わらない。

今日がダメなら、明日死なせて欲しい。

感情が顔に出ていたのか、琥珀が

「分かってる。深和が死にたいって思ってる事は。だけど、お願い。どうしても君じゃなきゃダメなんだ。」

少し泣きそうな顔をしながら、私に言った。

うっ…

そんな仔犬みたいな顔をされると、罪悪感がすごい。

なんだか、悪いことをしている気分だ。

「…分かった。」

しばらくは耐えたけど、琥珀の仔犬みたいな顔についに私は折れた。

「ほんと…?ありがとう!」

琥珀は満面の笑みを浮かべて、喜んでいた。

何がそんなに嬉しいんだろうか。

私には分からなかったけど、ちょっと微笑ましいような不思議な気分になった。

ふと、空を見上げる。

空はすっかり暗くなり、星が煌めき始めてた。

久しぶりに綺麗だと思ったこの空を今は不思議な気持ちで見つめてたーーー。