お母さんからお金を預かり家を出た。自転車に乗って近所の大型スーパーまでは約五分。駅のすぐそばのスーパーだから、わりと賑わっている場所にある。

秋になって日が短くなったせいか、暗くなったと思ったら一気に夜がやってくる。自転車に乗っていると、ビュンビュン冷たい風が通りすぎていった。

家から駅までの中ほどにある大きな総合公園の中を突き抜ける。この公園はグラウンドもすごく広くて、小中高生がよく野球やサッカーをして遊んでいるのを見かける。

今はもう真っ暗だから人の姿はないけど、昼間とはちがって人気のない夜の公園は少し不気味。全力で自転車を漕いで公園を抜けると、スーパーまではもうすぐだ。

一つ目の角を曲がって信号を渡ると到着。駐輪場に自転車をとめて中に入り、頼まれたものを買った。

そして再び自転車にまたがって、きた道を戻る。

総合公園の中に差しかかったとき、さっきは人影がなかったのに、街灯のポツンとしたあかりの中に動く人影が見えた。

「や、やだって言ってるでしょ! 離してよ」

「うっせーな、大人しくしろ。観念してさっさとこいよ」

「やっ、いやっ!」

「俺だって暇じゃねーんだよ。手こずらせるなっつーの!」

声を荒げてなにやらもめているらしい声。嫌がる女の子と、どんどん大きくなる男の人の声。なにやらただならぬ雰囲気を感じた。