ふゆみは動きやすいパンツルックに着替え、俺たちは桜井邸を後にした。お母さんが言った通り、今日は穏やかな小春日和だ。

「わあ、本当に素敵な車なのね?」

 ふゆみは俺の愛車を見て、すぐにそう言ってくれた。

「だろ? あのさ……」

 "神徳のジャガーとこれと、どっちが好き?"と聞きそうになり、すんでのところでやめた。なぜなら、"ジャガー"と言われたら悔しいからだ。

 車だけでなく、神徳と俺の比較もさせないようにしようと思う。あいつには、勝てる自信がないから。

 それはそうと、「ん?」と言って俺を見つめるふゆみを見てたら、どうにも我慢できず、

「きゃっ」

 俺はふゆみを強く抱きしめていた。

「ずっと、こうしたかったんだ」

「私も、してほしかった」

 俺は、ふゆみの柔らかな体の感触を堪能しつつ、辺りに誰もいない事を確認した。そして、

「キスしたい」

 と、ふゆみの耳元で囁いた。

「今?」

「今」

 すると、ふゆみも周りを見てから、

「いいよ」

 と言い、黒目がちの澄んだ瞳で、俺を見つめた。

 俺はふゆみの、ふわふわな髪を撫でながら、ゆっくりと唇を合わせた。

 ああ、キスって、なんて気持ちいいんだろう……

 ふゆみから甘い吐息が漏れ、キスはどんどん深まっていったのだが、

「裕くん、ダメ!」

 突然、ふゆみに押し返されてしまった。

「ふゆみ……?」

「防犯カメラ!」