「しかしふゆみに、"恩を返す"なんて言われた時は、私は、じゃなかった、私たちは、悲しくなったね?」

「そうですわね? そこまでふゆみちゃんに気を使わせたのは、私たちが至らなかったからだと思うの。ふゆみちゃん、ごめんなさいね?」

「ううん、そんな事ない。お父様も、お母様もとてもよくしてくれて、私には感謝しかなくて、どうやってその気持ちを表せばいいのか、それだけをずっと考えていたの。結果的に、お父様やお母様を悲しませることになっちゃったけど……」

「ふゆみちゃんは感謝って言うけど、私たちこそ感謝してるのよ。ね?」

「ああ、その通りだよ。ふゆみは私たちの生きがいであり、希望だからね」

「お父様、お母様……」

 ふゆみは立ち上がり、ご両親も立ち上がり、三人で抱き合った。そんな光景を見て、俺は感動しつつも、もはや自分はお邪魔虫と思われ、頃合いを見て、

「私は失礼させていただきます」

 と言ったのだが、三人は一斉に俺を振り向き、何かを口々に言った。

 同時に言うから定かではないが、確かお父さんは「まだ、いいじゃないか」と言い、お母さんは「ゆっくりしてらして?」とかで、ふゆみは「帰っちゃダメ!」だったような気がする。

 要は三人とも、俺に"帰るな"と言ったわけで、俺は帰るのをやめた。