いろいろな意味で彼に恐怖を感じている私に、
「芽実」

社長が私の名前を呼んだ。

「――はい…」

返事をしたら端正なその顔が近づいてきて、
「――ッ…」

唇が重ねられた。

まだ彼とキスをしていなかったことを思い出した。

唇が離れると、社長は私を見つめた。

「キレイだ」

社長はささやくように言うと、頭のてっぺんに唇を落とした。

彼の両腕が背中に回ったかと思ったら、私を抱きしめた。

柔軟剤なのか香水なのかわからないけれど、社長から漂っているその香りが私を包んだ。

その香りを躰中に感じながら私は社長が好きなんだと、心の底から思った。

「理京さん」

私は彼の名前を呼ぶと、
「好きです」

そう言って、その背中に両手を回した。

「僕も芽実が好きだよ」

社長は答えると、今度は額に唇を落とした。