「ふゆみちゃん。あなた、三浦さんを愛しているの?」

 母親は、あっぱれなぐらいの超ど直球だった。俺は正直、笑ってしまいそうだった。

 すぐにふゆみを見ると、当然だが、目を見開いて驚いていた。だが、隣の神徳を見たら、顔色ひとつ変えていなかった。

 はなから、それは違うと、確信しているからだろう。

「そ、そんなの、嘘です」

 あ、噛んだ。

「本当に?」

「はい。私はお母様に、嘘なんか言いません」

 目が泳いでるぞ、ふゆみ。俺にはふゆみの嘘は丸分かりだが、両親は分からないだろうと思う。

 ここまでは想定内で、問題は……

「三浦さん。娘はこう言ってるんですが、どちらを信じて良いのかしら?」

 来た!

 問題はここなんだ。予定では、両親諸共、ふゆみを説得するはずだった。しかしそれも、神徳の前ではもはや虚しいと思われ……

「私の思い違いでした。お騒がせして、すみませんでした」

 と、言ってしまった。悔しいが、ふゆみは神徳と結婚した方が幸せになれると思う。平凡を絵に描いたような、俺なんかではなく。

 情けなくて、涙が出そうだ。

 どんよりした空気の中、俺は立ち去るべく、立ち上がりかけたのだが……

「おやおや、これは失望ですね……」

 一瞬、速水が俺の頭にテレパシーを送って来たのかと思ったが、そんなわけもなく、今の言葉を発したのは、意外な事に、神徳だった。