その週の土曜日。俺は普段と同じ時刻に起きだし、よそ行きの支度をしてアパートを出た。

 そして、敷地内の駐車場でシートを被ったそれのシートを剥がすと、ジャーンって感じで現れたのは、目にも鮮やかなブルーの愛車、ランエボだ。中古だけど。

 早々それに乗り込み、エンジンを掛ける。お気に入りのクイーンを音量高めに流し、速水からもらった紙を見て、カーナビに目的地をセットし、いざ出陣だ!

 はやる自分の気持ちと、ついスピードを出したがる愛車を鎮めつつ、目指すはもちろん桜井邸、つまりふゆみの家だ。

 アポは取っていない。何度も電話しようと思ったが、電話口でなんて言っていいか分からないのと、その時点で"門前払い"されたら困ると思ったからだ。

 従って留守の可能性があるが、何度でも通うつもりだ。

 到着予定時刻より少し早く、目的地に着いた。そこには、大きな家、ではなく、門があった。

 車から降り、その門に近づくと、門扉の横の表札に"櫻井"とある。桜井邸の門で間違いないようだ。その下にインタフォンがあり、緊張しながらボタンを圧した。

『どちら様でしょうか?』

 少し待つと、老人と思われる男の声が応答した。

「新聞社の三浦と申します」

『どのようなご用件でしょうか?』

 さすがに、俺がアポなしなのはバレてるらしい。

「お嬢様について、親御さんに是非お話したい事があります」

 そう。俺はふゆみにではなく、ふゆみの父親に会おうと思う。もっとも、父親がいなければ母親でもよく、もちろんふゆみにも会いたいが。

『少々お待ちください』

 ふうー。

 少なくても、留守ではないらしい。果たしてふゆみの両親は、俺に会ってくれるだろうか……