昼時間になり、近くのコンビニに昼食を買いにいこうと席を立った時、千歩のスマホに同僚の麻衣子からメールが届いた。


“署内食堂にいるから、仕事が片付いたら来て。麻衣子”


千歩はその文章を読んで首を傾げる。

麻衣子らしくない誘い方。

いつもなら財布を持って一緒にお昼に出るのに。

疑問を抱きつつもメールを既読にして、署内食堂に向かう。

お昼時の食堂は警察関係者たちで賑わっていた。

様々な定食のにおいが廊下まで香る。

食堂に入ると、千歩はすぐに麻衣子の姿を探した。

「千歩!」

一足先に彼女の存在に気付いた麻衣子が手を振る。千歩もそれに気付いて手を振り返した。

「お待たせ」

千歩は麻衣子が待つ窓際の席に行き、席に着いた。

「私も今着いたところだから」

「そっか」

千歩が返事をしながら財布をテーブルの隅に置くと、麻衣子は黙って一つの丼ぶりをスッと差し出す。