それにしても、この書き方からするとAkaruに呼び出されたのかもしれない。仕事だから仕方ないのは百も承知だ。だけど……。


「……なんか負けた気分」


初めて愛し合った翌朝に、幸せな余韻ごと彼を奪われて、なんとなく悔しくなる。しかも相手はAkaruだし。

ファンなのに少々嫉妬してしまうも、今はもたもたしている暇はない。急いで支度すると合鍵を握りしめ、彼の部屋を飛び出した。


一旦自分の部屋に戻ると、新しい服に着替えて顔を洗う。昨夜からなにも食べていないので、さすがにこれでは昼までもたないと思い、食パンをかじりながらハイスピードでメイクを済ませた。

走って満員電車に滑り込み、なんとかギリギリで間に合ったが、すでに疲れ切っている。走ったせいで髪も乱れているし、あとでまとめよう。

昨日の甘い出来事が嘘のようだわ……。私、本当に耀の彼女になれたのよね?

そう不安になるくらい、余韻もなにもなく慌ただしい朝だけれど、バッグの中には彼の部屋の合鍵が入っている。

これが私たちの関係が変わった証なのだと思えば、次第に心が穏やかになっていくのだった。