「それでも君を抱きしめたいんだ」

「わがままですね」

「それはお互い様じゃないかな。

好きだから、君のことを抱きしめたいって僕は思ったんだ」

…そんなことを言われてしまったら、何も返すことができない。

私は本当に社長のことが好きなんだと思ってしまった。

「じゃあ、抱きしめていいですよ…?」

呟くように言った私に、
「それでは、お言葉に甘えて」

社長は両手を広げると、そのまま私の躰を包み込んだ。

フワリと、彼の躰からいつかのあの香りが鼻をくすぐった。

その香りは、香水なのかシャンプーなのか柔軟剤なのか――よくわからないけれど、私はこの香りを愛しく感じた。

抱きしめているその躰を受け入れるように、私は彼の背中に自分の両手を回した。