「社長、どうしますか？

車を呼びますか？」

「うーん、そうだねえ…」

「――理京さん？」

誰かが私たちの間に入ってきた。

「えっ？」

それに驚いたのは社長で、彼は声がした方向に視線を向けた。

つられるように私も視線を向けると、そこにいたのは１人の女性だった。

ツヤのある黒髪はワンレンボブだけど、手でさわったらサラサラとしていて指通りが滑らかそうだと思った。

理京さんって、社長の名前だよね？

そう思っていたら、
「…速水さんかい？」

社長は恐る恐ると言った様子で、彼女に声をかけた。

は、速水って…この人の名前だよね？

「今は速水じゃなくて、関口ですけどね」

速水さん――いや、“関口さん”と呼ぶべきなのか？――は、クスッと笑いながら言った。