ふたりはおそらく装飾係で午前中にパネルを設置した時点で仕事は終わっているから、放課後はデートだったのだろう。


もしかして…………遥斗の部屋に、あがったのかな。

そんな余計な考えが真っ先に頭に浮かんでしまった。わたしには関係のないことなのに。

ふたりの幸せを願ってるんだ。

わたしは遥斗と縁を切ったんだ。あの日から一度も話していないし、もし会ったとしてもまるで見えていないかのようにお互い接してきた。

だから、わたしは今日も遥斗は見えていない。


気持ちを無にして自分の家の門扉に近づく──

「──……ッ!」

門扉に手をかけ中へ入り、扉へと進んだ。

鍵を用意して鍵穴に差し、ガチャリと横に回した。

玄関に入り閉まった扉の鍵を中から閉める指が──震えてしまっていた。


「………っ」


止まらない。震えが。まったく。


わたしの目の前で………

百合ちゃんが、遥斗にキスをしたんだ。


「………けほっ……」


できない。息が。うまく。


また、この感じ。

さっき、やっと治ったのに。


だれかわたしを…………

水面から引き上げて。