「なんで」
わたしの頼みなんて完全に無視するかのような口調で告げると、そっと頬に手のひらを添えられた。
遥斗の温もりと感触が、わたしの皮膚に敏感に伝わる。
ジワジワと、先程よりも頬に熱を持ち始めるのが自分でもわかった。
「え、ちょっと…っ。な、なんでって…恥ずかしいから…。わたし、可愛くないし…肌とかもツルツルじゃないし…っ」
だからそうやって触られるとガサガサしてるのがばれちゃう…ガサガサまではしてないけどさ…。
今さらだけど、わたしのぐずぐずと泣いたあとの不細工な顔を、そんなに間近で見ないでほしい……。
「はあ…?もっと、自覚しろ」
遥斗の吐息が顔にかかる。
それくらい近くにあるのかと思うと、脳みそが沸騰してしまいそうなほどドキドキが止まらなくなった。
自覚しろ…?
自分が可愛くなくて肌もガサガサってこと…?
自覚してるよ、さっきから自分でちゃんと言ってるじゃん…。
そんなことを心のなかでちゃんと言い返していると。
クイ…と、少しだけ軽く顎を持ち上げられて。
「笑は………可愛いよ。だれよりも」
遥斗は囁くようにそう告げて……暗闇に溶け込むように、わたしの唇にそっとキスを落とした。