「自分でも変だなって思う。『大嫌い』って言われたのに、僕は絶対嫌いにはなれないんだから」


──ドキン、と心臓が一際強く波打った。まさかのひとことで火をつけられたかのごとく、体温が上昇していく。

嫌いじゃ、ない? じゃあ、なんで仕返しなんてするの?

……と、聞きたいのに聞けなかった。胸が熱いものでいっぱいになって、喉もキュッと締めつけられて。

なんのリアクションもできない私をよそに、耀は髪から手を離してマイペースに食事を再開する。人をこんなにもどかしい気持ちにさせておいて、平然としないでほしい。

別に、嫌いではないというだけで、好きだと言われたわけじゃない。それなのに……どうしよう。とっくに捨てていたはずの想いが、どんどん膨らんでくるのがわかる。

このままでは、あの頃抱いていた淡い恋心が、鮮明に色づいてしまう──。

止められない胸の高鳴りになぜだか危機感を覚え、それを悟られないように、私はとりあえずお酒を呷ることしかできなかった。