菅原は私を見つめてふわりと笑った。
優しくて、目の前にいる菅原は本物の王子さまのようだ。

ドアがゆっくりと開く。


先に何人か降りてから、今度は菅原が入ってきた。

すごいな。
電車に乗るだけだったのに、絵になるくらいかっこいい。


「春坂さん、おはよう」

優しい声音。
目の前にいる菅原が、私の知っている彼だった。


「……おはよ」

私は菅原をチラッと見たあと、視線を逸らした。
緊張というか、挨拶したあとどうすればいいのかわからなかったからだ。


今日もいい天気だね、とかありきたりなことを言うのもなんか嫌だし。


こういうところが口下手なのだ。
周りの人が寄ってこないのもわかる。

なんて、自分で考えて勝手に落ち込んでいると。


「なんで会って早々そんなに落ち込んでるんだよ」

耳に届いたのは、低くどこか不機嫌な声。
一瞬誰かと思い、顔を上げれば視界に映ったのはもちろん菅原で。