「私、よく怖がられるけど、本当は弱いの」
「それも今日で十分わかった」

「なかなか自分の気持ち言えない、バカなんだよ?」

「うん、だから俺にはそんなお前見せていいって言ってんだろ?

お前にとってもこの話、悪くないと思うけど」


たしかに悪い話なんかじゃない。
むしろ私にとって、またとない機会だ。

自分を変えられるチャンスなんじゃないかって。


「でも、菅原の女になるって何?」

想像できない。
菅原の女って、なんだか召使いにでもされそうな響きだ。


「お前は何も知らなくていいから」

ひどく優しい表情で言われ、なぜか頭を撫でられた。

なんか濁された気がするのだけれど……気のせい、だよね?

だって目の前にいる菅原は、意地悪そうじゃない。
優しく穏やかな表情をしているのだから。


「……わかった」

なんだかよくわからなかったけど、今この瞬間から私は菅原の女になった……らしかった。


そして、この時の私は、菅原の女になるのは交換条件だということを、すっかり忘れていた。