それから何秒かじっとしていると、菅原が小さく息を吐くようにして笑った気がした。
「菅原?」
そして私が名前を呼ぶと、とつぜん私の目尻に菅原の手が触れた。
「……はい、とれたよ」
とれた?
いったい何がとれたのかわからなかったけれど、まだ目を開けていいとは言われてないため確認できない。
「春坂さん?」
「……何」
「もう目開けていいよ?ごめんね」
ここでようやく開けていいと言われ、ゆっくりと目を開ける。
「まつげ、ついてたから」
菅原はそう言って優しく笑った。
なんだ、だから目を閉じさせたのか。
言ってくれたら自分でとったのに、と思いつつもお礼を言った。
「ありがとう」
「どういたしまして。俺、用があるから春坂さんは教室戻ってて?」
どうやら後ろで組んだ手も、もうほどいていいらしく、私は素直に頷いて教室に戻った。
「……ふっ、バカな女」
私の姿が見えなくなったあと、菅原がこんなことを呟いていただなんて知る由もなかった。