それは、大雨の日のことだった。



「みゃー」

一週間ほど前から、公園近くの電柱の隣に小さな仔猫が捨てられてあった。


ダンボールに入って捨てられていた仔猫は、自分が捨てられたのを知らずに健気に鳴いていて。

見捨てられるはずがなかった。


親にお願いしたけれど、お母さんが猫アレルギーだからダメだと言われ、この子の引き取り先を必死で探していた。

このままじゃないと、死んでしまう。


それだけは避けたくて、パンなどの食べ物やミルクを自分のお小遣いで買い、仔猫に与えていた。


「お前、ずっと捨てられたままだよな!」
「‪エサ欲しいか?エサ!あげねーよ!」
「ぎゃはは!雨でずぶ濡れじゃん!」


そして雨の日に、同じ中学の男子が悪ふざけで仔猫に意地悪しているのを見つけ、許せない気持ちに駆られる。


「……何してるの」

「今面白いとこだから邪魔すん……って、春坂さん!?」
「やべぇ、怒ってるよ……逃げろ!」
「す、すいませんでした!」

本当は男子に注意するなんか怖いけれど、その気持ちを抑えて必死に睨めば、すぐ怯えたように逃げていった。