『一度こっちを向こうか。』





いやいや、もう無理です!って。こんなにそばに梶田先生がいて、面と向かって話を聞くなんて絶対無理!!!





座って下を向いてるだけでも胸が裂けそう…。目を開けれない。





『困った……。そしたらそのままでいいから大切なことを先に言うよ。聞いててね。』






「は……はい。」




この状態でどうかお願いしますっ!





下を向いて目を瞑ったまま、梶田先生を意識しないようにしつつも、言葉に耳を傾ける。






『これからの治療のことだけど、今の状態を良くするためには、腸の状態を改善させるよりも胃の消化機能を良くしたいと思ってる。




今までとは違う薬を今後使っていって、良くなる兆しがない場合は、機能を失った箇所の切除を考えている。




でもあまりにも機能してない箇所が大きい場合は、胃の移植手術も考えている。





ここまではいいかな?』






えっ……






驚きのあまり気づくと目を開けていた。





しばらく思考が停止した。






そして返事ができない私を置いていくように、梶田先生は続けた。






『もう一度言うけど、薬を変えてしばらく様子を見る。それで効果がなければその時の胃の状態を検査して、切除か移植か決めていこうと思ってる。





薬は今までよりも強いものだから、様々な副作用が出てくるに違いない。
何かしら副作用が出たら、必ず教えて欲しい。』






そういうと梶田先生はじっと私の返事を待った。






「……はい。」





今聞いたこと、言葉では理解できても気持ちはついていけないでいる。
とにかくこれから私の体に起きようとしていることは、今までにはなかったことで…今までの辛い治療を遥かに超えたものになりそう。





考えただけでも逃げ出したい気持ちでいっぱいになる。






今の私はどんな顔をしてるのだろうか。







もはや目の前にいる憧れの梶田先生のことよりも、今想像もしていないことを言われ完全に打ちのめされた心境の私を客観的に見ている自分は、私を可哀想に眺めていることしかできないでいた。