「なに、急に。照れるんだけど」

『ふふっ。なつみもたまには素直になりなよー、っていうアドバイスだとでも思っておいて』


紗菜は明るい口調で言い、意味深な笑いをこぼした。

なんのことやらよくわからなかったが、残業中の彼女に悪いので、それからほどなくして話を切り上げた。スマホをタップして通話を終了させ、ひとつ息を吐き出す。

素直に、ねぇ……。そういえば、まだちゃんと耀に伝えていなかったな。

どうしようもない私の味方になってくれて、変わるきっかけをくれてありがとう、って。

それと、酷いことをたくさん言ってごめんなさい。どれも本心ではなかったし、大嫌いだというのも嘘。本当は──。

そこまでで、遠い昔に心の奥にしまった思いが溢れ出しそうになるのを留めた。自分に正直になるって、結構勇気がいるから。

でも今度彼に会ったら、感謝と反省の気持ちくらいはなんとか伝えてみよう。

彼と親友のおかげで、私はまたひとつ変われそうな気がした。