『っだから、こっちを向きなさい!』




まだ帰らない藤堂先生に次第に苛立ちを覚える。





『窓見てたら、またさっきと同じで聞かないだろ!?』





そう、私は嫌なことは極力逃げたいがために、逃げれることからは必ず逃げるようにしてる。
だって、逃げられないこともたくさんしてきたんだから、これくらい、いいじゃない。
今回の話もどうせ聞かなくてもやらなきゃいけないことなんだろうから、聞かなくても一緒なんだよ。





『失礼しまーす。』





あ、



突然閉まっていたカーテンの向こうから声がすると、カーテンが開く。





『終わりました?』





その声の主は、言わなくても分かるよね。





『美咲ちゃん、明日からよろしくね。梶田です。』





「は、はい。」






知ってます。もちろん、知ってます。





『ようやく向いてくれた……。』






『どこまで話は進んでますか?』





『いえ、どこまでも進んでません。』






『じゃあ、僕から話します。先生、医局長が探してました。』




『そうですか、そしたらお願いします。





美咲、ちゃんと梶田先生の話は顔を見て聞くこと。』





え?え?明日からじゃないの?




藤堂先生の顔は既に私を見ていない。




まだ心の準備ができてないんだけどぉー!



私の担当医なのに人に任せて颯爽と出て行った。
やっぱり、こんな患者は嫌だよね。誰だって…。