「君はもう出て行って構わないよ」
バスルームに入るなり、杉浦は男子生徒二人に拘束されていた凛香の腕を引っ張って立たせた。
「え……でもどうして秋人君がここに……?」
「いいから早く行ってくれ。もう君に興味はない……彼女をつまみ出せ。それと、ここは僕一人でやるから戻って来なくていい」
「待って! 秋人君に何をする気なの……⁉」
成すすべもなく連れ出されていく凛香の叫び声も、再びバスルームのドアが閉まるとすぐに聞こえなくなった。
静寂の中二人きりになると、杉浦は秋人の幼い顔立ちを見つめて顎に手を添えた。
秋人が不安そうな表情を浮かべると、杉浦は恍惚に満ちた口調で囁く。
「いいぞ、その顔だ……もっと近くで見せてくれ……!」
「杉浦、君……? どうしたの? いつもと様子がヘンだよ?」
「ああそうさ……そしておかしくしたのは君だよ、秋人君」
「僕が……おかしくしちゃった……?」
「やっぱり自覚がないんだね……最初は君に腹が立って仕方なかったが、ここまで来ると逆に素晴らしいよ!」
次の瞬間、杉浦はいきなり『電撃棒』を秋人のみぞおちに突っ込んでスイッチを押した。
棒から電流が流し込まれ、秋人は悲鳴を上げてのたうち回る。
「ああああああああああッ!」
「何て可愛い悲鳴なんだ……! こんな声、この教室……いや、世界中を探したって君にしか出せないよ!」
「イタイよ……ううっ……杉浦君……もうやめて欲しいです……!」
電流が一旦収まると秋人は両腕を肩に回し、潤んだ瞳で上目遣いになって懇願した。
ゾクゾクッ……と、背筋を這い回るその快感は、新二を痛めつけた時とは比べ物にならなかった。
いや……この天使の様な少年と比べること自体が烏滸がましい。
「ダメダメ、ダメだよ秋人君。君はオトモダチの身代わりになったんだ。それ相応のバツを受けてもらわないと」
「でも……やっぱり僕、おかしいと思います……」
「おかしい? 何がだい?」
「だって、りゅうくんも、りんちゃんも、誰も悪くないもん。だから誰かを傷付けるのは間違ってるし、身代わりだからってオシオキされるのは納得できないです。それとも……」
「僕がもしイケナイことをしたのなら教えてください。それなら僕は……大人しくオシオキを受けます」
杉浦は、愉悦のあまり思わず涎を垂らしそうになった。
「あ、秋人君は自分の何がイケナくてこんな目に会ってるのか、わ、分からないんだねっ?」
「……うん」
「ここに連れて来られた理由も? 誰よりもたくさん先生に『おしおき』されてることも? ぼぼ、僕たちにのけ者にされたことも? 今自分が僕に成すすべもなくいたぶられていることも⁉」
「分からないよ……だって、誰も教えてくれないから!」
ビリビリッ、と眩い青い閃光が部屋を満たした。
「うああああああああ!」
「本当にイイ……君こそが理想の完成形だ……今すぐこの手で侵したい! 冒したい! 犯したい!」
「誰か……助けて……ヒウッ……ヒック……」
二重の大きな瞳から涙を流して痙攣する秋人。
それを見下ろす杉浦の顔は、獣のそれだ。
「ハァ……ハァ……ひたすらに正義を唱え続けるのは疲れるもんだよ、秋人君……。でも正義は守られなきゃいけない。だからこそ、たまには息抜きが必要なんだ」
彼はしゃがみ込み、螺旋が光る細い瞳で秋人の紅潮した顔を至近距離で見つめる。
「だから――」
彼の口が糸を引いて開かれ、狂犬の様な息が無垢な少年の顔にかかった。
「君はそのまま――何も知らないままでいいんだよ」
バスルームに入るなり、杉浦は男子生徒二人に拘束されていた凛香の腕を引っ張って立たせた。
「え……でもどうして秋人君がここに……?」
「いいから早く行ってくれ。もう君に興味はない……彼女をつまみ出せ。それと、ここは僕一人でやるから戻って来なくていい」
「待って! 秋人君に何をする気なの……⁉」
成すすべもなく連れ出されていく凛香の叫び声も、再びバスルームのドアが閉まるとすぐに聞こえなくなった。
静寂の中二人きりになると、杉浦は秋人の幼い顔立ちを見つめて顎に手を添えた。
秋人が不安そうな表情を浮かべると、杉浦は恍惚に満ちた口調で囁く。
「いいぞ、その顔だ……もっと近くで見せてくれ……!」
「杉浦、君……? どうしたの? いつもと様子がヘンだよ?」
「ああそうさ……そしておかしくしたのは君だよ、秋人君」
「僕が……おかしくしちゃった……?」
「やっぱり自覚がないんだね……最初は君に腹が立って仕方なかったが、ここまで来ると逆に素晴らしいよ!」
次の瞬間、杉浦はいきなり『電撃棒』を秋人のみぞおちに突っ込んでスイッチを押した。
棒から電流が流し込まれ、秋人は悲鳴を上げてのたうち回る。
「ああああああああああッ!」
「何て可愛い悲鳴なんだ……! こんな声、この教室……いや、世界中を探したって君にしか出せないよ!」
「イタイよ……ううっ……杉浦君……もうやめて欲しいです……!」
電流が一旦収まると秋人は両腕を肩に回し、潤んだ瞳で上目遣いになって懇願した。
ゾクゾクッ……と、背筋を這い回るその快感は、新二を痛めつけた時とは比べ物にならなかった。
いや……この天使の様な少年と比べること自体が烏滸がましい。
「ダメダメ、ダメだよ秋人君。君はオトモダチの身代わりになったんだ。それ相応のバツを受けてもらわないと」
「でも……やっぱり僕、おかしいと思います……」
「おかしい? 何がだい?」
「だって、りゅうくんも、りんちゃんも、誰も悪くないもん。だから誰かを傷付けるのは間違ってるし、身代わりだからってオシオキされるのは納得できないです。それとも……」
「僕がもしイケナイことをしたのなら教えてください。それなら僕は……大人しくオシオキを受けます」
杉浦は、愉悦のあまり思わず涎を垂らしそうになった。
「あ、秋人君は自分の何がイケナくてこんな目に会ってるのか、わ、分からないんだねっ?」
「……うん」
「ここに連れて来られた理由も? 誰よりもたくさん先生に『おしおき』されてることも? ぼぼ、僕たちにのけ者にされたことも? 今自分が僕に成すすべもなくいたぶられていることも⁉」
「分からないよ……だって、誰も教えてくれないから!」
ビリビリッ、と眩い青い閃光が部屋を満たした。
「うああああああああ!」
「本当にイイ……君こそが理想の完成形だ……今すぐこの手で侵したい! 冒したい! 犯したい!」
「誰か……助けて……ヒウッ……ヒック……」
二重の大きな瞳から涙を流して痙攣する秋人。
それを見下ろす杉浦の顔は、獣のそれだ。
「ハァ……ハァ……ひたすらに正義を唱え続けるのは疲れるもんだよ、秋人君……。でも正義は守られなきゃいけない。だからこそ、たまには息抜きが必要なんだ」
彼はしゃがみ込み、螺旋が光る細い瞳で秋人の紅潮した顔を至近距離で見つめる。
「だから――」
彼の口が糸を引いて開かれ、狂犬の様な息が無垢な少年の顔にかかった。
「君はそのまま――何も知らないままでいいんだよ」