『ペインター』先生は、今にも舌舐めずりしそうなほどにいやらしく問いかけた。

この女……全てお見通しってか……?

動揺と焦燥を必死に抑えて、新二は席に着く。


「いや……何でもない。今のは俺の思い過ごしだ」

「なんだよ、全部教えてくれよ」

「そうよ、隠し事は良くないわ!」

「まだ先生が言ってることがよく分からないんだけど」


口々にクラスメートが難詰する中、彼は教室を見渡してこれまで見せたこともないような笑顔を被った。


「おいおい、そんなに慌てるなって。要はテストで良い点数を取れば生き残れるってだけの話だ。みんなで勉強会でも開いて対策すれば問題はない。もし驚かせたなら謝る、すまなかった」


一度も下げたことのない頭を下げる新二に、全員が驚く。

普段の粗暴さとのギャップもあってか、そんな彼の態度に生徒たちは『まあ何とかなるか』と徐々に落ち着きを取り戻し始める。

念の為横目で秋人の様子を伺うと、秋人は机に落書きをしていた。

……何だ? あのミミズがのたくった様な絵は……

何はともあれ、これで万事解決……と、新二が確信したその時――


「――待て。僕は騙されないぞ」


彼を行く手を阻む声が響いた。