「僕が話したいのはあのお姫様とお姫様に関する “あの人” のことなんだけどね」

あの人?

「誰だよ、あの人って」

「うーん?それは秘密かなぁ」

イラっとする。

シャツの襟を掴むと、こちらに引き寄せた。

「でも、一個言えることがある」

「なんだ」

「“あの人”はお姫様の帰りを今も待ってるよ」

「はあ?」


「今度、お姫様に話してみて。きっとお姫様の血相変わっちゃうよ」

「お前、なにを企んでる」

「んー?僕は、正攻法でうまくいかなかったこと、別の道からうまくいかせようとしてるだけだよ?」

正攻法でうまくいかなかったこと……。

「…2年前の抗争か」

「ふふふっじゃあね、wolfくん。僕の言うことちゃんと聞いてね、じゃなかったら」


南は、俺の耳元に駆け寄ると。


「beastくん、死んじゃうよ?」


和佳菜に残した言葉と同じようなセリフを吐いて、暗闇に消えた。