「忘れもんがあって取りに来ただけだ。それだけだったが、面白いもんを見せてもらった。いいだろう、それでお前への疑いがなくなるのなら…お前らもいいだろう?」

観衆はざわりと大きく揺れ、やがて…『総長が言うなら……』というひとりの声で全てが決まった。

「俺らがどれだけ調べてもいいってことだろう?お前、自分の過去が全て出されると思え」

あたしの目の玉を覗き込みながら仁はそう言ったが。

「ええ、いいわよ。でも、忘れていないかしら。あたしのおじさんは沢村 琢磨よ。あの人が簡単に鍵を開けさせると思う?」

下っ端の彼らがやったってあたしの情報は簡単には手に入らない。

表の大体の内容に踊らされるだけだと思う。

「やっぱ、お前面白い女だな。……上等だよ。うちの力全て使ってお前率いる琢磨さん達に挑んでやる」

ああ、と勝手なあたしの細胞が理解する。

彼は面白がっているんだ。

ただ、あたしを道具にして心の中で笑っている。

それが彼の目から伝わった今、あたしは手加減などしない。

堂々と彼にぶつかってみせる。

力では勝つことなど出来ないけれど、あたしにだって武器はある。

情報に踊らされても、なんだって構わない。

仁が調べたいのならば好きにすれば良い。





あたしはあたしの持っている武器で全力で挑んでやる。