「千歩、ずっとお前が好きだった」


秋人はハッキリそう告げて、千歩の体を優しく抱き寄せる。

千歩の鼓動が大きく脈打った。

ずっと待ち望んでいた言葉。

聞ける日は来ないと思っていた。

千歩は秋人の背中に強く手を回す。

離したくないとでも言うようにコートの背中部分をギュッと握りしめた。


「もし、千歩も同じ気持ちなら俺の帰りを待っていて欲しい」


「……分かった」


千歩が小さく頷く。

秋人の手が千歩の冷たい頬に触れる。

優しく触るだけの口づけを落とした。




秋人がNYへ旅立つ一週間前のお話。



No.00 昔々のお話 fin.