引っ越ししてから3年が経ち
春樹は保育園に通い
私は近所のスポーツジムの受付で
パートとして働いている

小さいが2人で暮らすには充分の家に住み
前に働いていた時の貯金を少しづつ使いながら
贅沢はあまりないがお金に困ることもない
そんな生活を送っている


ただ、春樹には父親がいない
時々きかれることがある

「ぼくのパパどこ?」
毎回心が痛くなる質問だ
初めてきかれた時は思わず涙が出た

「ごめんね、今はちょっといないけど
もしかしたらまた会えるかもしれないよ」

「じゃあいい子で待つ!」

未だにうまく返事をしてあげられない


ごめんね、春樹
私が臆病で考えなしだから
悲しい思いさせてるね


いつも春樹の寝顔を見ながら
涙を流すのだ


ーーー春樹
この名前は、昔彼が言ってた名前

「俺は男だったら名前は春樹がよかったよ
なんかポカポカ優しい名前で
俺にピッタリだろ」
例の呑み会でポロッと話題になったセリフ

「そうね、外面が朗らかなあなたには
ピッタリな名前かもしれないわね」

「は⁉ほんとかわいくねーな
…でもお前も慶とかじゃなくて
他の名前に憧れたりとかなかったかよ」

「私は…ないかな
冷やかされるのは嫌いだけど
でも、慶ってあんまりないから
特別ぽくていいでしょ?」


なんて、笑い合ったのが懐かしくて
男の子がお腹の中にいるとわかった時から
名前は春樹にしようと決めていた


あの人のように
誰より優しい明るい人に



後悔と未練でいっぱいの私の
唯一のお願いだった