『少し高めだな。廊下は走るなよ。』




「はい…。」




血圧が高いだけなら大丈夫。長年入退院を繰り返してるだけあって、先生の言葉で自分の症状は分かってしまう。





『冷えた階段にいたら風邪引くぞ。』





うわっ!バレてる…。私が階段にいたこと。やっぱり梶田先生のすぐあとにいたんだ。







「ん?先生、いつもより早くないですか?ここに来るの。」





いつも梶田先生の10分くらい後なのに。




血圧計を片付ける先生に何気なく聞いてみる。





『あぁ。ところで最近の体調はどうだ?』





あ………………。









この間の検査結果、






悪かったんだ。





だって、いつも先生が

体調はどうだ、

って聞くときは、検査結果が悪い時だもんね。





「まぁ、そこそこ。」





『そこそこって…。近いうちに…』





「父は来週来ます!







来週の月曜日に………来ますから。」





先生の言いたいことは分かってる。検査結果が悪いから、親に説明したい、だからいつ来るのか。ってこと。




『そうか。』





「先生…眠いので寝てもいいですか?」





先生の顔を見ないで言った。





『あぁ…、』





先生に背を向けて布団をかぶった。





すると先生は少しして、部屋を後にした。





「うぅ…………。」






こんなこと慣れっこなのに、





涙が出てくる。





よくあることなのに、よくあって欲しくないことだから、






泣けてくる……。






今日は梶田先生に会えた。






でも、いいことがあれば悪いこともある。だから今、こうして悪いことが起きてる…。





病気が良くなること意外にいいことなんてない。でも良くなることなんて、ずっとないから。だから違うことで幸せや喜びを感じてる…。





それもそれで、すごく辛いよ……。