「いやああああぁぁぁぁ!!!!!!!!」


カエデちゃんの絶叫が響きました。

私たちは彼女の手を取って、トイレを飛び出し、廊下を走りました。

背後から、アミダさまが追ってくるのを感じます。

三人とも、悲鳴を上げながらの必死の逃避行です。


「いやだぁ、やだあぁぁ、カエデはあやまったもん! カエデはあやまったのにぃいぃ! 許しでよ、許しでよ、あみだざまああぁあ」


そう叫ぶと、カエデちゃんは私たち二人を突き飛ばしました。


「きゃっ!」


カエデちゃんは一人でドンドン逃げていきます。

ですが、アミダさまは突き飛ばされ、転がった私たちには目もくれず――、


カエデちゃんに追いつくと、その光の中に彼女の全身を包みこみ……、

フッと、目の前から消えたのです。

カエデちゃんと共に…………


「そ、そんな…………」


マーヤちゃんは愕然としながら、


「カエデちゃんは、謝ってたのよ……」


彼女が何を言おうとしているのかは分かっていました。

ですが、私はそれとは別に――、


「カエデちゃんは、謝ってたじゃない……。なんで、なんでカエデちゃんを連れて行くの……」


私は、それとは別に……、

思い出していたのです。

図書室で調べた時に目にした一節を、


「ひどいよ……。そんなのって、ないよ……。どうしてよ、どうしてカエデちゃんがこんな目に遭うの……! この世には、神も仏もないっていうの!?」


『摂取不捨』―-。

ものの逃ぐるを追はへ取るなり。

アミダさまは一度ゴクラクへ連れて行くと決めたなら、相手が逃げても逃げても、決して逃がさず、追いかけ、捕まえ、放さないという――。



もう、誰もアミダさまからは逃げられない……。